ゆうべみたゆめ(えちゅーど)
ゆふべみた夢(Etude)

冒頭文

花の散つてゐる街中の桜並木を通つてゐた。灯ともし頃であつた。妙な佗しさに追ひ立てられるやうな気持で、足早に歩いてゐたやうだつた。 道の左手に明るいカフエが口を開いてゐた。入口に立つて覗くと、酒を飲んでしやべつてゐる群の中に知つた顔が二三人見えた。あまり会ひたくもない人たちだつたので、僕はしばらくそこに立つたまゝでゐた。 そのとき奥の勘定台のわきの壁に倚りかゝつてゐるNが眼に入つ

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 富永太郎詩集
  • 現代詩文庫、思潮社
  • 1975(昭和50)年7月10日