むだい
無題

冒頭文

幾日(いくひ)幾夜(いくよ)の 熱病の後(のち)なる 濠端のあさあけを讃ふ。 琥珀の雲 溶けて蒼空(あをぞら)に流れ、 覚めやらで水を眺むる柳の一列(ひとつら)あり。 もやひたるボートの 赤き三角旗(ばた)は 密閉せる閨房の扉(と)をあけはなち、 暁の冷気をよろこび甜むる男の舌なり。 朝なれば風は起(た)ちて 雲母(きらら)めく濠の面(おもて)をわたり、 通学する十三歳の女学生の

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 富永太郎詩集
  • 現代詩文庫、思潮社
  • 1975(昭和50)年7月10日