むだい
無題

冒頭文

たゞひとり黎明の森を行く。 風は心虚しく幹のあはひを翔り、 木々はみなその白き葉裏を反(かへ)す。 樹の間がくれに、足速(あしばや)に 白き馬を牽きゆくは誰ぞ。 道の辺(べ)の 歯朶の群をのゝけり。 かゝるとき、湿りたる岩根を踏めば あゝ、わが出生(しやう)の記憶甦へる。

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 富永太郎詩集
  • 現代詩文庫、思潮社
  • 1975(昭和50)年7月10日