むだい
無題

冒頭文

月青く人影なきこの深夜 家々の閨をかいま見つゝ 白き巷を疾くよぎる侏儒の影あり 愚かなる状(さま)して黒々と立てる屋根の下に 臥所(ふしど)ありて人はいぎたなく眠れり 家々はかく遠く連なりたれど 眠の罪たるを知るもの絶えてあらず 月も今宵その青き光を恥ぢず 快楽(けらく)を欲する人間の流す いつはりの涙に媚ぶと見えたり かゝる安逸の領ずる夜(よる)なれば あらんかぎりの男女(

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 富永太郎詩集
  • 現代詩文庫、思潮社
  • 1975(昭和50)年7月10日