しんやのどうし
深夜の道士

冒頭文

人語なく、月なき今宵 色ねびし窓帷(ぎぬ)の吐息する 此の古城なる図書室の中央の 遠き異国の材もて組める 残忍の相ある堅き牀机に ありし日よりの凝固せる大気の重圧に 生得(しやうとく)の歪(ひづみ)悉皆消散せる 一片の此の肉体を枯坐せしめ 勇猛(ゆうみやう)なく效(かひ)なき修道なれど なほそが為に日頃捨離せる真夜中の休息を 貪りて、また貪らうとはする。 青笠に銀の台ある古い

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 富永太郎詩集
  • 現代詩文庫、思潮社
  • 1975(昭和50)年7月10日