みなと

冒頭文

港は人生の闘に疲れた魂には快い住家(すみか)である。空の広大無辺、雲の動揺する建築、海の変りやすい色彩、燈台の煌き、これらのものは眼をば決して疲らせることなくして、楽しませるに恰好な不可思議な色眼鏡である。調子よく波に揺られてゐる索具(つなぐ)の一杯ついた船の花車(きやしや)な姿は、魂の中にリズムと美とに対する鑑識を保つのに役立つものである。とりわけ、そこには、出発したり到着したりする人々や、欲望

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 富永太郎詩集
  • 現代詩文庫、思潮社
  • 1975(昭和50)年7月10日