どうけとヴィナス
道化とヸナス

冒頭文

何といふすばらしい日だ! 広大な公園は、愛神(アムール)の支配の下にある若者のやうに、太陽のぎら〳〵した眼(まなこ)の下に悶絶してゐる。 なべての物にあまねき此の有頂天を示す物音とてはない。河の水さへ眠つたやうである。ここには人の世の祭とは遙かに事かはつた、静寂の大饗宴があるのだ。 不断に増しつゝある光はます〳〵物象を輝かせてゐるやうだ。上気した花は、其の色の勢力を、空の瑠璃色と競

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 富永太郎詩集
  • 現代詩文庫、思潮社
  • 1975(昭和50)年7月10日