ごぜんいちじに
午前一時に

冒頭文

やつと独りになれた! 聞えるものはのろくさい疲れきつた辻馬車の響ばかり。暫くは静寂が得られるのだ、安息とは行かないまでも。暴虐をほしいまゝにした人間の顔もたうたう消え失せた、俺を悩ますものはもう俺自身ばかりだ。 やつと俺にも闇に浸つて疲を休めることが許されたのだ! まづ、扉の鍵を二度まはす。かうして鍵をまはすと、俺の孤独が増すやうだ。現在この世から俺を隔てゝゐる城壁が固くなるやうだ。 怖ろしい

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 富永太郎詩集
  • 現代詩文庫、思潮社
  • 1975(昭和50)年7月10日