げいじゅつかのコンフィテオール
芸術家の告白祈祷

冒頭文

秋の日の暮方は何と身に沁み入ることだ。苦しいまでに身に沁みる。何故と言つて、朧ろげではあるが強さには事欠かぬ、えも言はれぬ或る感覚があるものだから。また、「無窮」の刃くらゐ鋭い刃はないものだから。 空と海との無限の中にわが眼を溺らせる味ひ! 孤独、沈黙、蒼空の類ない純潔! 地平線上にぶるぶる顫へながら、その微小と孤独とでもはや如何ともしがたい私の生活をかたどつてゐる白帆、また、波の単調な旋律

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 富永太郎詩集
  • 現代詩文庫、思潮社
  • 1975(昭和50)年7月10日