あるまどんなに スペインふうのほうのうぶつ
或るまどんなに 西班牙風の奉納物

冒頭文

わたくしのつかへまつる聖母さま、おんみの為に、わたくしの悲しみの奥深く、地下の神壇を建立(こんりふ)したい心願にござります。 わたくしの心のいと黒い片隅に、俗世の願ひ、また嘲けりの眼(め)の及ばぬあたり、おんみのおごそかな御像(みすがた)の立たせまするやう、紺と金との七宝の聖盒をしつらへたい心願にござります。 懇ろに宝石の韻をちりばめた、純金属の格子細工のやうに、琢(みが)きあ

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 富永太郎詩集
  • 現代詩文庫、思潮社
  • 1975(昭和50)年7月10日