きしゃであったおんな
汽車で逢つた女

冒頭文

二丁目六十九番地といふのは、二軒の家を三軒にわけたやうな、入口にすぐ階段があつて、二階が上り口の四疊半から見上げられる位置にあつた。打木田が突立つて、戸越まさ子といふんですがと女の名前をいふと、二階の障子がものしづかに開いて、女の顏が顎から先きに見え、紛ふ方もない汽車で逢つたまさ子であつた。 打木田は、やあ僕やつて來ましたよ、と笑ひ顏を向けると、女は、あら、ほんとによく來てくだすつたわね、とい

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「婦人公論 第39巻第10号」中央公論社、1954(昭和29)年10月1日

底本

  • 黒髮の書
  • 新潮社
  • 1955(昭和30)年2月28日