ボストン・バッグ |
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冒頭文
朝の九時に鐵のくぐりを出た打木田は、それでも、しばらく立つて誰か迎へに來てゐるだらうかと、あちこち見𢌞したが、やはりさとえは來てゐなかつた。外にも出る者がゐるらしく、差入屋の入口に五六人の肩をちぢめた連中がゐたが、迎へのない打木田を見ると眼に同情のしなを見せて見送り、打木田はその前でちよつと頭を下げて行つた。五六人の連中は打木田のしたより二倍くらゐのていねいさで、頭を下げて應へた。 打木田は
文字遣い
旧字旧仮名
初出
「新潮 第51巻第1号」新潮社、1954(昭和29)年1月1日
底本
- 黒髮の書
- 新潮社
- 1955(昭和30)年2月28日