しつう
歯痛

冒頭文

M—市を通つてA—温泉へ着いたのは、もう夜であつた。 今年は殊に万遍なく暑さの続いた夏の半以上を東京で過した融は、愛子同伴で、次男の養子問題についての用件を帯び旁々三四日の予定で、山の空気を吸ひにS—湖畔の親類を訪ねた帰りを、彼は煤烟に悩まされ通しの、中央線を避けて、途中どこかへ寄つて別の方面から帰るつもりで、交通の便利のいゝA—温泉へと立寄ることにしたのであつた。彼がその温泉を見るのは六七年

文字遣い

新字旧仮名

初出

「中央公論 第四十三年第一号(我国文化の最高標準号)」1928(昭和3)年1月1日

底本

  • 徳田秋聲全集 第16巻
  • 八木書店
  • 1999(平成11)年5月18日