くさいきれ
草いきれ

冒頭文

漁船などを僦(やと)つて、××会の同志の若い人達六七人と、若鮎の取れる××川に遊んでの帰り、郊外にあるI—子の家へ三四の人を誘つて行つた頃には、鮎猟の真中(さなか)に一時しよぼ〳〵と雨をふらしてゐた陰鬱な梅雨空にもいくらか雲の絶え間が出来て、爽かな星の影さへ覗いてゐた。 I—子はその頃転地先を引揚げて、そこにひそやかな隠れ家のやうな家を一軒もつてゐた。木香の由かしい、天井の高い、床や違棚の造り

文字遣い

新字旧仮名

初出

「新潮 第二十四年第十号」1927(昭和2)年10月1日

底本

  • 徳田秋聲全集 第16巻
  • 八木書店
  • 1999(平成11)年5月18日