にんしきろんとしてのぶんげいがく
認識論としての文芸学

冒頭文

文芸学の対象は云うまでもなく文芸である。尤も従来の日本語の習慣によると、文芸は又文学とも呼ばれている。文学という言葉は通俗語として、又文壇的方言として、特別なニュアンスを有って来ている。単に文芸全般を意味する場合ばかりでなくて、却って小説とか詩とかいう特定の文芸のジャンルを意味したり、又はそうでなくて、一つの作家的乃至人間的態度を意味したりもしているのである。丁度詩という言葉が文芸の一つのジャンル

文字遣い

新字新仮名

初出

「唯物論研究 五十一号」1937(昭和12)年1月号

底本

  • 戸坂潤全集第四巻
  • 勁草書房
  • 1966(昭和41)年7月20日