ろうく
老苦

冒頭文

「ではお父さんは三ちやんと一緒に寝台自動車に乗つて行つて下さい。僕は電車で行きますから。」「あら、さう。」「病院までは僕も一緒に乗つて行きますから。」「よし〳〵。」「T老院長は患者に愛著をもつてゐます。どうしても癒さうとしてゐます。あの海岸の療養所にこの夏一杯もゐたら、づつと快くなるでせう。費用もかけさせないやうにと、心配してくれてゐるんです。あゝ云ふ患者が、一家のうちに一人出ると、中産階級のちよ

文字遣い

新字旧仮名

初出

「文芸春秋 第八巻第九号」1930(昭和5)年9月1日

底本

  • 徳田秋聲全集第16巻
  • 八木書店
  • 1999(平成11)年5月18日