しきい |
| 閾 |
冒頭文
その日も土井は町へ牡蠣雑炊(かきざふすゐ)を食べに行つた。京都へ来てから、思ひのほか日がたつてゐたので、彼はもうそろ〳〵帰り支度(じたく)をしてゐた。六兵衛だとか、ゑり正だとか、そんな老舗へも立寄つて、少しばかりの土産物を買ひ調へてゐた。甥が西陣の織物屋を知つてゐるので、反物も少し心がけたりしてゐた。十二月も早や押し詰つて、余(あま)すところ幾日もなかつた。 彼は立寄つたついでに、もつと行(い
文字遣い
新字旧仮名
初出
「文芸日本 第一巻第三号」文芸日本社、1925(大正14)年6月1日
底本
- 徳田秋聲全集 第15巻
- 八木書店
- 1999(平成11)年3月18日