ふたりのびょうにん
二人の病人

冒頭文

昨夜も散歩の帰りに、好子は子供のことで少(すこ)しばかり融(とほる)に訴(うつた)へるところがあつた。訴へるといつても、それは愚痴とか不満とかいふやうな種類のものでは決してなかつた。たゞ融の亡妻の遺(のこ)した丸子と、好子自身の子の百合子とに対する彼女の平等な母性愛を基調として、一方が少しでも余計に幸福になつたり、一方が少しでも不幸を感じたりすることのないやうにと、いつも細かく神経をつかつてゐる彼

文字遣い

新字旧仮名

初出

「不同調 第三巻第一号」1926(大正15)年7月1日

底本

  • 徳田秋聲全集 第15巻
  • 八木書店
  • 1999(平成11)年3月18日