おりかばん
折鞄

冒頭文

融(とほる)は何時(いつ)からかポオトフオリオを一つ欲しいと思つてゐた。会社員とか雑誌新聞記者とか、又は医者のやうに、別段それが大(たい)して必要と云ふほどのことはなかつたけれど、しかし其(それ)があると便利だと思はれる場合が時々(〴〵)あつた。一日の汽車旅行とか、近いところへ二三日物を書きに出る場合とか、でなくて長い旅でもこま〳〵した手廻のものを仕舞つておいて、手軽に出し入れのできる入れものが一

文字遣い

新字旧仮名

初出

「改造 第八巻第四号」1926(大正15)年4月1日

底本

  • 徳田秋聲全集 第15巻
  • 八木書店
  • 1999(平成11)年3月18日