このえないかくのじょうしきせい
近衛内閣の常識性

冒頭文

近衛内閣の成立は、今の処割合評判が悪くないというのが事実だろう。なぜ評判が悪くないかと考えて見ると、恐らく第一に、近衛文麿公という人物が現下の時局に占めているユニックな位置によるものらしい。軍部と政党とに相当の信頼があるということ、所謂国内相剋の緩和者としてかけがえのない人物であること、等々であるらしい。将来の重臣候補を以て目されるに足るだけの貫禄があるとも見られている。自分に大臣経歴をつけるのが

文字遣い

新字新仮名

初出

「日本評論」日本評論社、1937(昭和12)年7月号

底本

  • 戸坂潤全集 第五巻
  • 勁草書房
  • 1967(昭和42)年2月15日