よしんのいちや
余震の一夜

冒頭文

或夜中に私は寝所について、いくらか眠つたと思ふ頃に、又人騒がせな余震があつたとみえて、家中騒ぎだした。私は夢心地にこの地震を感じたに違ひなかつたが、どのくらゐの強さで初まつたかを、感ずるほど微細な知覚は働いてゐなかつた。私は今度の大地震を経験する前から、時々坐つてゐる尻の下で、大地が動もするとゆら〳〵と揺(ゆら)いでゐるやうな気のすることが屡であつた。勿論それは私の神経が微弱なために、自身の体の無

文字遣い

新字旧仮名

初出

「改造 第六巻第一号」1924(大正13)年1月1日

底本

  • 徳田秋聲全集 第14巻
  • 八木書店
  • 2000(平成12)年7月18日