めたんこでん |
| めたん子伝 |
冒頭文
めたん子はしぜん町の片側に寄り切られ、皮紐とか棒切れとかで、肩先や手で小突かれ、惡い日は馬ふんを蹶とばして、ぶつかけられてゐた。めたん子は抵抗する氣が全然失せてゐて、對手をちよつと見返るだけで、その眼には何時も怒りは封じられてゐて、怒ることが出來ないのだ。皮膚は熟柿色で眼はやぶ睨みをしてゐるのが、友達仲間から厭がられ、憎まずにゐられないのである。これは人間に與へられてゐる皮膚の色ではない。 め
文字遣い
旧字旧仮名
初出
「文學界 第9巻第10号」文藝春秋、1955(昭和30)年10月号
底本
- 室生犀星全集 第十卷
- 新潮社
- 1964(昭和39)年5月25日