ゆうじょうにかんけいあるエッセイ
友情に関係あるエッセイ

冒頭文

二年間あまり、世間から隔離されている間に、世間は全く変って了った。久し振りに会う友人達は、どうだ世の中は変ったろう、と得意そうに私をながめる。私は、いや思ったほど変ってはいない、と答えることにしているが、私の狼狽と敗北の色はさすがに隠す由もないと見えて、友人達はあまり私の言葉を信用しない様子だ。 尤も友人達の云うのは、私の思惑にも拘らず、案外無邪気な内容のものかも知れない。例えば菓子屋の

文字遣い

新字新仮名

初出

「改造」1941(昭和16)年2月号

底本

  • 戸坂潤全集 別巻
  • 勁草書房
  • 1979(昭和54)年11月20日