せっそんひつ「なすず」
雪村筆「茄子図」

冒頭文

画でも書でも掛ければそこの壁にはその作者が存在する。つまり一個の客と自分との同棲の状態がおこる。だから書斎掛けの幅には、自分と異質を感じるようなものはがまんにも下げておかれない。 いくら名画でも余りきびしい堅い作品は窮屈である。といって浮世絵の濃艶も困るし、妙にくだけて洒脱めかしたお客も少々、小うるさい。気にならない水墨などがよく、そして、ふと眼をやったとき、何か無口なうちに話し合えるよ

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 吉川英治全集・47 草思堂随筆
  • 講談社
  • 1970(昭和45)年6月20日