しんらんのすいみゃく
親鸞の水脈

冒頭文

本誌(大法輪)の二十五年に因(ちな)んで、僕の二十五歳頃を語れと仰っしゃるんですか。さあ今の青年とちがって、僕らのその時代は無我夢中でしたな。合理主義、利己主義、そんな風を卑(いや)しむ風潮の中で、いわゆる青年の客気満々でしたよ。無一物で東京に出てきて、苦学しながらも、夢だけは、いつも失っていないんです。だから素寒貧(すかんぴん)でいながらも、気宇だけはまあ今のリアルな青年よりは豊かだった。そして

文字遣い

新字新仮名

初出

「大法輪 十月号 二十五周年記念特別号」1959(昭和34)年

底本

  • 吉川英治全集・47 草思堂随筆
  • 講談社
  • 1970(昭和45)年6月20日