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冒頭文
鳴門秘帖のころ いま帰って来たばかりなんですよ。大映の試写室で、「鳴門秘帖」を見たんですがね。考えてみると、あれを書いたのは三十年前なんだな。てれましたね、たいへんに。映画化は今度で七回目なんです。はなはね、ひと頃の競映時代で、東亜キネマとか、松竹日活だとかで、さんざん競映でやったもんですよ。だが僕は、正直いうと、自分の古いもんの映画化は、ほとんど見たことないんです。少々気味がわるくって
文字遣い
新字新仮名
初出
「文藝春秋」1957(昭和32)年11月号
底本
- 吉川英治全集・47 草思堂随筆
- 講談社
- 1970(昭和45)年6月20日