おしいれずいひつ
押入れ随筆

冒頭文

持ちもの嫌い ひとにはバカげていても、自分にはゆるせない潔癖がたれにもある。子供をみているとおもしろい。枕の好み一つでも、柔いのやら堅いのやらだ。食膳でも、潔癖なのと、ズボラなのが、始終問題をかもしている。ところが、そのズボラ屋も時によって『たれか、ぼくの机をいじッたな』などと、似気ない潔癖をしめすことが往々ある。これは親の遺伝でもなし、単なる虫の居どころでもないらしい。 下町

文字遣い

新字新仮名

初出

「暮しの手帖」暮しの手帖社、1957(昭和32)年

底本

  • 吉川英治全集・47 草思堂随筆
  • 講談社
  • 1970(昭和45)年6月20日