うつくしいにほんのれきし
美しい日本の歴史

冒頭文

鼻の白粉 一夜、ある映画館で私はつい飛んでもない自分の阿呆をあたりのつつましい観客たちに暴露していた。人気者のユル・ブリンナー主演の「大海賊」を観ているうち、誰もがシュンとしていたラストの恋人との別れのシーンへ来てつい私はクツクツ笑いが止まらなくなってしまったのだ。 主役の海賊のブリンナーが恋人の胸をつき放して言いつづける。『祖国のない海、定住のない海。君は連れて行けない』『君

文字遣い

新字新仮名

初出

「週刊文春」1959(昭和34)年

底本

  • 吉川英治全集・47 草思堂随筆
  • 講談社
  • 1970(昭和45)年6月20日