しゅんや
春夜

冒頭文

詩神 うたびとよ、こといだけ、くちふれよ。 はつざきのはなさうび、さきいでて、 このゆふべかぜぬるし、はるはきぬ。 あけぼのを、まつやかのにはたたき、 あさみどり、わかえだにうつりなく。 うたびとよ、こといだけ、くちふれよ。 詩人 たにまのけしきさとくらく、 おぼろにかすむはざまかな。 かつきさうぞくやさかたの もりのあたりをうかびでて、 いまはたのべをすべりく

文字遣い

新字旧仮名

初出

「明星 午歳・四」1906(明治39)年4月

底本

  • 上田敏全訳詩集
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1962(昭和37)年12月16日