うたよ、ねがうは
歌よ、ねがふは

冒頭文

「歌」よ、ねがふは「愛」の神さがし求めて かの君の前に伴ひ歌はなむ。 「歌」はわが身の言別を、主(しゆ)はかの君を 恐(おそれ)無(な)く正眼(まさみ)に見つゝ語りなむ。 禮(ゐや)には篤(あつ)き「歌」なれば、よしそれ唯(たゞ)の ひとりにて、 げに往(ゆ)きぬとも、恐るべき事は無けねど、 安かれと、心知(じら)ひに伴ふや 「愛」の神 それ後見(うしろみ)と傍らにあるこそよけれ

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「芸苑 二ノ一」1907(明治40)年1月

底本

  • 上田敏全訳詩集
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1962(昭和37)年12月16日