よそひとのあざむがごとく
よそ人のあざむが如く

冒頭文

よそ人のあざむが如く、君も亦あざみ給ふか 我君よ、君はた知らじ、覺りえじ、世に不思議にも 俤(おもかげ)のかくは移ろひ、變りたる深きいはれを、 そは君がたへなる色を仰ぎ見し惑ひ心地ぞ。 我心、君もし知らば、『憐愍(あはれみ)』のいかで堪ふべき かうやうのつらき恥目に我心惱ましむるぞ。 見よ、「愛」は君います邊(あたり)、のびらかに心のどけく、 廣大の無邊力(むへんりよく)をぞ安んじて

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「芸苑 二ノ三」1907(明治40)年3月

底本

  • 上田敏全訳詩集
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1962(昭和37)年12月16日