はくしゃのとばり |
| 薄紗の帳 |
冒頭文
薄紗(はくしや)の帳(とばり)たれてあれど、こよなき「あそび」は思ふらく、げにもゆゆしき涜(けがれ)かな、徒(いたづら)なりや床(とこ)は無し。この一面に白妙(しろたへ)の房(ふさ)と房(ふさ)とのからみあひ、蒼(あを)みて曇る玻璃(はり)の戸を空(むな)しく打つて事も無し。されど黄金(こがね)の夢の身には樂(がく)の音(ね)籠(こ)もる虚(うろ)のなか、琵琶(びは)悲(かな)しげに眠りゐて、いづ
文字遣い
旧字旧仮名
初出
「アルス 一ノ五」1915(大正4)年8月
底本
- 上田敏全訳詩集
- 岩波文庫、岩波書店
- 1962(昭和37)年12月16日