よいどれぶね
醉ひどれ船

冒頭文

われ非情の大河を下り行くほどに曳舟の綱手のさそひいつか無し。喊(わめ)き罵る赤人等、水夫を裸に的にして色鮮やかにゑどりたる杙(くひ)に結ひつけ射止めたり。われいかでかかる船員に心殘あらむ、ゆけ、フラマンの小麥船、イギリスの綿船よ、かの乘組の去りしより騷擾はたと止みければ、大河はわれを思ひのままに下り行かしむ。荒潮の哮(たけ)りどよめく波にゆられて、冬さながらの吾心、幼兒の腦よりなほ鈍く、水のまにま

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「上田敏詩集」玄文社詩歌部、1923(大正12)年1月10日

底本

  • 上田敏全訳詩集
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1962(昭和37)年12月16日