みずぶそく
水不足

冒頭文

この土地には水が缺乏してゐる。震災後は殊にひどくなつた。地盤が動搖して水脉が狂つたのか、多くの井戸が涸れてしまつた。昔から、どんな旱魃(かんばつ)が續いた時にも、水量の減じたことのないと云はれてゐた山ノ手の大井戸でさへ、一月十五日の二度目の大地震のためにすつかり調子を狂はせて、稍々(やや)もすると、乾枯びた底を見せるやうになつた。他所の井戸で貰ひ水の出來ない家では、夜の明けないうちから、汲みに出掛

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「改造 第七巻第十号」改造社、1925(大正14)年10月1日

底本

  • 正宗白鳥全集第十二卷
  • 福武書店
  • 1985(昭和60)年7月30日