そうていのなやみ
装幀の悩み

冒頭文

ぼくの最初の詩集『思弁の苑』を出版したのは、昭和十三年の八月である。当時は、神保町の巌松堂のなかに、むらさき出版部というのがあって、「むらさき」という雑誌を出していた。ぼくも頼まれるまま、時々その雑誌に詩を発表していたところ、編集長の小笹氏のすすめで、むらさき出版部から出すことになったのである。ぼくは、機会さえあればいつでも出版出来るようにと、詩稿の整理をしてあったので、それに、佐藤春夫氏の序詩と

文字遣い

新字新仮名

初出

「図書新聞」1956(昭和31)年6月30日

底本

  • 山之口貘詩文集
  • 講談社文芸文庫、講談社
  • 1999(平成11)年5月10日