きちじつ
吉日

冒頭文

「自分に關しては、たゞ一つだけ確信してゐることがある。……疾かれ遲かれ、ある吉日に自分は死ぬるのだ。」 「私は、それ以上の確信を有つてゐる。私はある惡日に生れたのだ。」 年少の頃、『浴泉記』といふロシア小説の飜譯を讀んだ時に、私はかういふ會話のやり取りに心を打たれたことがあつた。(後年英譯で讀み直すと、「美しい朝」と「いやな晩」といふ文句が、吉日惡日を言葉として對照されてあつた。)

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「サンデー毎日 第七年第十三号」毎日新聞社、1928(昭和3)年3月15日

底本

  • 正宗白鳥全集第十二卷
  • 福武書店
  • 1985(昭和60)年7月30日