まごだち
孫だち

冒頭文

大至急話したいことがあるから、都合のつき次第早く來て下さいといふ母方の祖母さんの手紙を見ると、お梅はどんな大事件かと、夕餐(ゆふめし)の仕度を下女に任せて、大急ぎで俥(くるま)に乘つて、牛込から芝の西久保まで驅け付けた。潛り戸を入つて敷石傳ひに玄關へ行くまで、耳を澄ましたが、家(うち)の中は何時(いつ)ものやうにひつそりしてゐた。 一聲案内を乞うたが、誰れも出て來ないので、お梅は遠慮なし

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「婦人公論 第一年第五号」中央公論社、1916(大正5)年5月1日

底本

  • 正宗白鳥全集第六卷
  • 福武書店
  • 1984(昭和59)年1月30日