もふく
喪服

冒頭文

浜口治平 静江  妻 美紗  長女 八穂  次女秋元 博  浜口の秘書かつ横浜、磯子屏風ヶ浦の台地にある浜口の邸。早春。——午前十時頃。サン・ルームの広廊をひかえた古風な食堂。晴れた寒い朝。蹲踞(つくばい)の水に薄氷が張っている。芝生の広い庭のむこうに早春の海。静江と八穂、食卓について遅い朝食をしている。 八穂 コオフィ……(珈琲の茶碗をつきだす)静江 三杯目よ……いいにしておきなさい……また眼が

文字遣い

新字新仮名

初出

「文學界」1957(昭和32)年7月号

底本

  • 久生十蘭全集 Ⅱ
  • 三一書房
  • 1970(昭和45)年1月31日