うしごめかん えいがかんめぐりじゅう
牛込館 映画館めぐり(十)

冒頭文

夕方の神楽坂通りは散歩の学生や帰りがけの勤め人なぞでいつもいっぱいである。 私は久し振りで坂を上って牛込館を見に行った。 錦輝館(きんきかん)だの豊玉館だの——矢張りそんな時分に栄えた牛込館がそのまま取り残されている。窓のところに客寄せの楽隊でもいてくれたなら、ひょっとして無性に懐かしい気持がしたかもしれない。    ×  × 此処は未だ階下(した)ばかりしか入った

文字遣い

新字新仮名

初出

「時事新報」時事新報社、1928(昭和3)年10月14日

底本

  • 時事新報
  • 時事新報社
  • 1928(昭和3)年10月14日