はくぼのかお
薄暮の貌

冒頭文

暦の上では、もう初秋だとは云ふものの、まだ残暑がきびしく、風流を心にたゝむ十数人の男女を打交へた一団にとつて、横浜(はま)の熱閙を避けた池廼家(いけのや)の句筵は、いくぶん重くるしさを感ぜしめた。細長い路地に、両側を楆(かなめ)かなにかの生籬にしてあるのはいゝとして、狭い靴脱から、もう縁板がいやに拭き光りがしてをり、廊下を踏んでゆくと、茶黒い光沢(つや)を帯びたものが韈(くつした)を吸ひとるやうに

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 日本の名随筆 別巻25 俳句
  • 作品社
  • 1993(平成5)年3月25日