あきかぜ
秋風

冒頭文

子供の頃「坊やん」と謂はれて居た小悧好な男があつた。彼の家はさして生計が豊かといふわけではなかつたが、さうかといつて苦しいといふわけではなく、田畑も少しは人にも貸して尚自分の家でも充分な耕作をして居たやうなところから、女ばかり引きつゞいて生れた後にひよつこり男の子として彼が生れた家庭は、ひた愛でに愛でつくして、某(なにがし)といふりつぱな名前があるにも拘らず「坊や、坊や」と呼び呼びした。隣家のもの

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 日本の名随筆37 風
  • 作品社
  • 1985(昭和60)年11月25日