しゅんでい |
| 春泥 |
冒頭文
向島 一 ……渡しをあがったところで田代は二人づれの若い女に呼びとめられた。——小倉と三浦とはかまわずさきへ言問(こととい)のほうへあるいた。 「何だ、あれ?」 すぐにあとから追ッついた田代に小倉はいった。 「あれは、君……」いいかけて田代は「慶ちゃん、君は知ってるだろう?」 それがくせの頤(あご)をなでながらあるいている三浦のほうへ眼を向けた。 「チビ三郎の内儀(かみ)さんじゃァねえか
文字遣い
新字新仮名
初出
「大阪朝日新聞」1928(昭和3)年1月5日~4月4日
底本
- 春泥・三の酉
- 講談社文芸文庫、講談社
- 2002(平成14)年8月10日