はなのさくまえ
花の咲く前

冒頭文

一 赤(あか)い牛乳屋(ぎゅうにゅうや)の車(くるま)が、ガラ、ガラと家(いえ)の前(まえ)を走(はし)っていきました。幸吉(こうきち)は、春(はる)の日(ひ)の光(ひかり)を浴(あ)びた、その鮮(あざ)やかな赤(あか)い色(いろ)が、いま塗(ぬ)りたてたばかりのような気(き)がしました。それから、もう一つ気(き)のついたことは、この車(くるま)がいってしまってからまもなく、カチ、カチという拍子

文字遣い

新字新仮名

初出

「お話の木」1937(昭和12)年5月

底本

  • 定本小川未明童話全集 11
  • 講談社
  • 1977(昭和52)年9月10日