いもがゆ
芋粥

冒頭文

元慶(ぐわんぎやう)の末か、仁和(にんな)の始にあつた話であらう。どちらにしても時代はさして、この話に大事な役を、勤めてゐない。読者は唯、平安朝と云ふ、遠い昔が背景になつてゐると云ふ事を、知つてさへゐてくれれば、よいのである。——その頃、摂政(せつしやう)藤原基経(もとつね)に仕へてゐる侍(さむらひ)の中に、某(なにがし)と云ふ五位があつた。 これも、某と書かずに、何の誰と、ちやんと姓名

文字遣い

新字旧仮名

初出

「新小説」1916(大正5)年9月

底本

  • 現代日本文學大系 43 芥川龍之介集
  • 筑摩書房
  • 1968(昭和43)年8月25日