ふしぎなような話であるが、最高の美食はまったく味が分らぬ。しかし、そこに無量の魅力が潜んでいる。 日本の食品中で、なにが一番美味であるかと問う人があるなら、私は言下に答えて、それはふぐではあるまいか、と言いたい。東京でこそほとんどふぐを食う機会がないが、徳島、下関、出雲あたりに住んで、冬から早春の候にかけて、毎日のように、ふぐを食うことのできる人を私は真にうらやましく思う。 去る一月、私は