あわびのみずがい
鮑の水貝

冒頭文

あわびの水貝は、あわびを切っただけでよいようなものであるが、これは元来、江戸前の料理だ。それと言うのも、関西にあわびがないからだ。あわびにかぎらず、貝というものは、東京を本場としなければならない。東京のほうは品物も豊富なので、料理法も心得ている。私どもも、そのコツは江戸前の料理から覚えたのだが、あわびの水貝料理は、あわびを固くすることが秘訣だ。まず生きのいい雄貝を塩をたくさん使って揉む。そうすると

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 魯山人味道
  • 中公文庫、中央公論社
  • 1980(昭和55)年4月10日