しなのざくらのはなし
信濃桜の話

冒頭文

子供が桃や柿の芽生えを見つけて来て、庭の片隅に栽ゑて置くやうな心持で、棄てもせず忘れてもしまはず、時々来て見るといふ程度の問題が、私には十ばかりも有る。いつ実がなるといふ当ては無いが、是でもたゞの野生とはちがつて、僅かながら人間の意図が籠つて居る。誰かゞ引取つて育てゝくれるまで、目じるしの棒でも立てゝ置かうといふだけのものゝ、是はその一つである。 十年ほど前に世に出した信州随筆といふ本の

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 日本の名随筆65 桜
  • 作品社
  • 1988(昭和63)年3月25日