わたしのりれきしょ ――ほうろうのすえ、だんボールをおもいつく
私の履歴書 ――放浪の末、段ボールを思いつく

冒頭文

「よし偉いもんになったるぞ」 『紙にしようか、メリケン粉にするか』。私はまだ迷っていた。明治四十二年、二十九歳のときである。朝鮮から満州、香港と流れ歩いた末、やっと見つけた東京での二畳の部屋。そこへ大の字にひっくり返って、天井の雨漏りのしみをながめながら考えたのはこれからのことだった。紙というのは後に私が名づけ親となった段ボール——いまではテレビなどの電機製品の紙ばこ材料になっている、あれで

文字遣い

新字新仮名

初出

「日本経済新聞」日本経済新聞社、1959(昭和34)年6月28日~7月17日

底本

  • 私の履歴書 昭和の経営者群像1
  • 日本経済新聞社
  • 1992(平成4)年9月25日