はるおとりょこうできなかったはなし
春夫と旅行できなかつた話

冒頭文

一社會人として、こゝに一文を草しなければかなはぬ義務を感じてゐる。 佐藤春夫氏と共に晩秋、秋の(ママ)ふるさとを訪づれる約束は、眞實である。實現できず、嘘になつて、ふるさとの一、二の人士の嘲笑の的にされた樣子である。 嘘も、誠も、この世に於ては、力量の問題で、あつさり判決されるものゝ樣である。ばか、と言はれて、その二倍三倍の大聲發して、ばか、と叫び返せば、その大聲の力士あがりの勝ちになるの

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「西北新報 第五百六号」1937(昭和12)年1月1日

底本

  • 太宰治全集11
  • 筑摩書房
  • 1999(平成11)年3月25日