むだい(こうんのじゅうぞうしついとうしょかぶんしゅう) |
無題(故海野十三氏追悼諸家文集) |
冒頭文
「海野さんのものを全部読まして下さい」と言って来た、若い電気学生があった。それは私の知人の次男坊で、私の書いたものなどは、鼻であしらって、一向感服した顔もしてくれないお点の辛い青年であったが、海野君の作品にひどく傾倒して、私の持っている海野十三氏著の幾十冊を悉(ことごと)く読破して、まだもの欲しそうな顔をしているのであった。 その青年は今はもう立派な弱電気の学者になり、さる学校で教鞭を執って
文字遣い
新字新仮名
初出
「探偵作家クラブ会報 二五号」1949(昭和24)年6月
底本
- 野村胡堂探偵小説全集
- 作品社
- 2007(平成19)年4月15日